欲望という名の列車 その2

まんのう公園が休園日では仕方がないので、「長田うどん」 に戻った。ここの名物は釜揚げうどんだ。だしの香りがぷんと漂う温かいつゆに、すりおろしたしょうがとネギを入れて待つ。しばらくすると、 茹で上がったばかりの麺が運ばれてきた。早速、つゆに麺をくぐらせ、つるつるとすする。うわ、うまいわ、これ。
うどんを食べて少し落ち着くと、隣のおばさんグループの声が耳についてきた。「~べ」というような語尾でしゃべっていた。 東のほうからの団体旅行者だろうか。おばさんのうるささに東西はないようだ。僕はすっくと立ち上がり、「少しは静かにしたまえ。 せっかくのうどんがまずくなるだろう!」と心の中で言い、実際には店の人に「ごちそうさまー」と言って店を出たのだった。
その後、満濃大橋を渡り、対岸にある「町営かりん温泉」 に立ち寄った。広くもなく狭くもないといった感じの浴室だ。数人の年寄りがこの日告示があった町長選の噂をしていた。体を流そうと、 シャワーの栓をひねったら、実はシャワーヘッドが床に落ちていたため、予期せぬ方へ冷たい水しぶきが飛んでいった。「ヒョウ」とも「ヒャウ」 ともつかない微妙な悲鳴を上げ、隣に座っていたおじいさんが飛び上がった。ただちに謝罪をしたのだが、「年寄りの冷や水」 という言葉が脳裏に浮かび、不謹慎にも内心面白くて仕方がなかった。

一時間ほど休憩した後、土器川沿いの自転車道を北上。うわ、富士山だ!と早とちりしそうなシルエットの飯野山、別名「讃岐富士」 を眺めながら走る。高さは422mしかない。もちろん、ふもとに樹海などない。田園が広がるばかりだ。のどかな讃岐平野の風景だ。 土器川沿いの自転車道は走りやすくて爽快だった。
小一時間ほど走り、「骨付鳥 一鶴」 土器川店に到着。さっそく店に入り、生ビールの中ジョッキを注文した。この時、まだ午後4時。ノザキサイクルの店長でさえ、 平日は午後5時までビールを我慢しているというのに!

おやどり、とりめしも注文した。この写真を撮ったとき、すでにビールは2杯目。表面がパリッと焼きあがったおやどりにかぶりついた。 肉自体は硬い、岡山弁で言う「しわい」感じなのだが、かみ締めると口の中に旨みたっぷりの肉汁が広がる。 コショウなどのスパイスが効いていてビールにぴったり。極楽のひととき。
店を出たのは、午後5時前。すぐ近くの丸亀駅で自転車をたたんで、各駅停車の土讃線列車を待った。 中高生たちがホームにたむろしていた。明るいうちからビールを飲んで申し訳ないという気持ちと、どうだ、 大人はいいだろうという気持ちが交互に湧き起こった。まもなく列車が着いた。のんびりと窓の外を眺め、 たった一日とはいえ旅の充足感を感じながら、四国を後にしたのだった。
おしまい。
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